港湾構造物の設計において、もっとも影響する自然外力は波であり、波の特性を把握することは非常に重要なことです。したがって長期間にわたる波浪観測によるデータの蓄積が必要となってきます。波浪観測とは、波高・周期・波向観測の総称であり、かつては目視による観測に頼っていましたが、近年は技術の進歩により、海象計をはじめとする波浪観測装置を用いた観測が行われるようになりました。また、ケーブル式やテレメータ式の観測機器を用いることで、観測データをリアルタイムで把握することが可能であり、さらにインターネットによるネットワークを構築することで、より効率的な情報の共有化が図れます。
[海象計のイメージ図]
波の高さを調べる場合、波高計で得られた波形から、ひとつひとつの波を定義する必要があります。
波の定義方法としては、ゼロ・アップ・クロス法が一般的であり、これは波形記録に平均水面の線を引き、この線を水面が上向きに交差する点を「波のはじまり」と定義するものです。
波群の中で波高を大きい方から数えて1/3の数の波について、波高を平均したものを有義波(H1/3)、また同じ波の周期を平均したものを有義波周期(T1/3)と呼んでいます。
ゼロ・アップ・クロス法による波高と周期の考え方
が波高の周期を表す
波の高さの目安は、気象庁海洋観測指針で示されています。
風浪(風によって発生した波)の大きさを示した波浪階級表とうねりの大きさを示したうねり階級表があります。
例として風浪階級表は以下のように示されます。船からの波の高さを測る場合はこの表を目安として観測します。
また、目視で観測される波の高さは有義波高に近いものと言われています。
風浪階級の説明 | 波の高さ(m) |
---|---|
鏡のようになめらかである | 0 |
さざ波がある | 0をこえ1/10(0〜0.1) |
なめらか、小波がある | 1/10をこえ1/2(0.1〜0.5) |
やや波がある | 1/2をこえ1と1/4(0.5〜1.25) |
かなり波がある | 1と1/4をこえ2と1/2(1.25〜2.5) |
波がやや高い | 2と1/2をこえ4(2.5〜4) |
波がかなり高い | 4をこえ6(4〜6) |
相当荒れている | 6をこえ9(6〜9) |
非常に荒れている | 9をこえ14(9〜14) |
異常な状態 | 14をこえる(14〜) |